thumb|right|264px|(左から)麹味噌・赤味噌・合せ味噌
味噌(みそ)は、穀物を発酵させて作られた日本の発酵食品である。日本の定番調味料であり、日本の味として世界に広がっている。
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味噌は副食素材が豊富になった今日では調味料とみなされているが、伝統的には日本の食生活における主要な蛋白源であり、特に江戸時代中盤以前は「おかず」的な扱いをされていた。調味料として今日でも日本料理に欠かせないものの一つとなっている。主な原料は大豆(戦国時代などは主に糠が原料とされた)で、これに麹や塩を混ぜ合わせ、発酵させることによって大豆のタンパク質が消化しやすく分解され、また旨みの元であるアミノ酸が多量に遊離する。製造に際しては、麹が増えると甘味が増し、大豆が増えると旨味が増すとされる。温暖多湿という日本の国土条件の中、職人技により製造されるが、現代的な食品の衛生基準との間で伝統を守りづらくなっている。
非常に種類が豊富であり、その地域、種類により赤味噌、白味噌、合わせ味噌(調合味噌)、などに別れる。
通常「味噌」と言う言葉は日本のものを限定して呼称するが、「中華味噌」等とも呼ばれる調味料「醤(ジャン)」など同一系譜の東アジア、東南アジアの発酵食品を、その類似性から含める場合もある。また食品学、人類学的には、日本の味噌は醤の中の穀醤(こくしょう)に分類される。
海外旅行中に、味噌汁を飲みたくなる人がいるなど、日本人の味として親しまれている。
スローフードや日本食ブームにより、味噌の良さが改めて見直されている。
*大豆
*米 - 加工用米
*塩
*麹 - 米、麦、豆など地域によって様々。
味噌には以下のような成分が含まれる。
*たんぱく質
*グルタミン酸をはじめとする各種アミノ酸
*ビタミンB3
*ビタミンE
*酵素
*イソフラボン
*コリン
*レシチン
thumb|味噌蔵の木桶
thumb|現在市販されている味噌はプラスチック製の容器に機械で詰められて売られている事も多い。(写真は江戸甘みそ)
味噌は、古代には、穀物を原料とする塩蔵発酵食品である醤(ひしお)の一種、穀醤として扱われ、奈良時代の文献には「未醤」(みさう・みしょう:まだ豆の粒が残っている醤の意味)と呼ばれた味噌の記録がある。縄文時代から製塩は行われ、醤などの塩蔵食品が作られていたと見られる。味噌は中国から伝来したという説もあるが、味噌の原型となる大豆の醤は日本でも古くから食べられていたと推測され、弥生時代の遺跡からは穀物を塩蔵していた形跡が見つかっている。
中世の日本では、「手前みそ」という表現が生まれた。室町時代になると、各地で味噌が発達し、調味料というよりは保存食として用いられるようになった(現代では、味噌というとペースト状のものが想起されるが、元々の味噌は米や麦の粒がそのままにぽろぽろした状態であり、つまんで食べられる)。戦国時代には兵糧(陣中食)として重宝され、兵士の貴重な栄養源になっていた。その名残は、朴葉味噌などに残っている。各地の戦国武将にも味噌作りは大事な経済政策の1つとして見られるようになった。現在のように調味料として認識されるようになったのは、江戸時代になってからであり、味噌は各地の風土・気候を反映されていて、熟成方法などが異なり全国に多様な味噌をもたらした。
味噌は、かつては各家庭で作られるのが当たり前であったが、近年は、味噌を家庭で仕立てることは珍しくなった。今日では北海道音威子府村から沖縄県与那国町まで、日本の全ての地域に製造業者が存在するが、言い換えればそれほど高度な技術や多額な資本投下無しに製造できる証であり、特定地域に集中している醤油製造との違いでもある。
他の食品と同じように商品の多機能化と差別化が行われ、単に素材の違いだけでなく、出汁入りのものやカルシウムなどを添加したものが販売されている。1970年代(昭和40年代)までは食料品店(酒屋、三河屋)などで醤油や味噌が樽から量り売りされていたが、流通の変化などで量り売りは姿を消し、袋やプラスチック容器などのパッケージに入ったものに変わっている。従来は袋詰めの際、添加物としてソルビン酸カリウムが使用されたが、現在は酒精(アルコール)を2~3%添加する。これにより、膨張を防ぐことができる。
ミソの表記と呼び名の語源は、末醤で、これが未醤と誤って書かれ、やがて味醤、味曽、味噌と変化したものであることは、「倭名類聚抄」(934年頃)や「塵袋」(1264~87年頃)という辞書に書かれている。「大宝令」(大宝元年 701年)の「大膳職」条では、末醤で、他に味醤、美蘇の字もすでに見える。
藤原京(700年前後)の遺跡からは、馬寮(官馬の飼養などを担当する役所)から食品担当官司に醤と末醤を請求したものとして、表は「謹啓今忽有用処故醤」、裏には「及末醤欲給恐々謹請 馬寮」と書かれた木簡が発掘されている。
中尾佐助は中国の豆豉(浜納豆に類似)や乾醤(カンジャン)、朝鮮のテンジャンなどと味噌を比較し、朝鮮では「メジュ」と呼ばれる中間製品である玉麹からテンジャン(味噌)とカンジャン(醤油)が作られ、日本でも味噌玉という中間製品から味噌が作られる風習が残っているといった味噌とたまりに関する類似点を指摘、日本の味噌は直接には朝鮮半島から伝来し、メジュが日本に伝わって味噌となったとされるという見解を紹介している[中尾佐助 『中尾佐助著作集 料理の起源と食文化(2)』, 北海道大学図書刊行会, 2005年9月, p. 537-550. 「第V部 酒と発酵食品の文化 ナットウとミソの来た道」 ISBN 9784832928817. 『クロスロード』 Vol. 18, No. 201, p. 36-41 (1982) 「文化のルーツを探る6」を収録したもの。]。
味噌はJASでは「みそ」と表記され、次のように分類される。
* みそ
** 米みそ - 大豆と米を発酵・熟成させたもの。
** 麦みそ - 大豆と大麦又ははだか麦を発酵・熟成させたもの。
** 豆みそ - 大豆を発酵・熟成させたもの。
** 調合みそ - 上記の各みそを混合したもの。または、その他のみそ。
thumb|赤味噌の一つ・江戸甘味噌(左)と淡色系の信州味噌(右)
赤味噌・白味噌の違いは、大豆や麹のたんぱく質と糖分によるメイラード反応により生まれ、主に熟成期間に由来する。赤味噌は、1年以上熟成させたものであり、そのため塩分濃度が高い。熟成期間が長いので、メイラード反応が進み褐色の色が付く。白味噌は、塩分濃度が低く熟成期間が数ヶ月と短い。熟成期間が短いので色が白く材料の麦などの粒子が残るものもある。その他メイラード反応を抑えるために、大豆を蒸すのではなく茹でたり、麹の種類や、量を調節するなどの方法がとられる。
赤味噌は塩分濃度が高く塩辛く、熟成期間が長いのでコクがある。白味噌は塩分濃度が低く麹の糖分により甘い。赤味噌は、東北地域(米)・中京地域(豆)を中心に作られている。豆は糖分が少なくアミノ酸の材料である蛋白質が多く含まれているので、豆からは主に赤味噌が造られている。中京地域の一部では、黒い八丁味噌も含め赤味噌と呼び、その味噌汁を赤だしとよぶ。
thumb|味噌の種類の一つ・八丁味噌
全国的に見て、一般的な味噌は米味噌であり、豆味噌(赤)は、中京地域のみで造られている。米味噌の色は、黄色や黄色を帯びた白色、赤色など多様。米味噌は淡色の場合、一般に煮大豆を用いるが、赤みのかなり濃い米味噌は蒸し大豆を用いる。また、米麹が多く使用される味噌ほど熟成期間が短く済む傾向もある。米の白味噌では信州味噌・西京味噌が代表的で、米の赤味噌では津軽味噌、仙台味噌などが代表的である。西京味噌は甘みが強く、仙台味噌は辛みが強い。津軽味噌はコクがあり、信州味噌はあっさりとした口当たりを特徴とするなど様々な特徴がある。米味噌の多く消費される地域は、東日本全域と、北陸地方、近畿地方である。なお、日本の消費量で1世帯あたり味噌消費量での第1位は長野県であり、またその生産量においても長野県が群を抜いており、おやきなど地域での名産品もある。
麦味噌は生産量の11%ほどを占め、九州、中国地方西部、四国西部では主に麦の白味噌が造られている。北関東では、大麦を使った赤味噌が造られている。
豆の赤味噌は蒸し大豆(或は煮大豆)と豆麹を用い、米の赤味噌よりも熟成期間が長いので、その色は米の赤味噌よりもさらに赤みが強く黒味を帯びた濃い赤茶色である。米味噌や麦味噌に比べて甘味が少なく、渋味がありうまみが強いのが、大きな特徴である。豆味噌を主として消費するのは中京圏の愛知県全域、岐阜県美濃地方の中南部・西部、三重県北東部に限られる。豆味噌では、八丁味噌が代表的である。
なお、近年ではこの他に雑穀のアワ、ヒエ、キビを使った味噌が一部の自然食品店などで販売されている。
米みそ
大豆と米を発酵・熟成させたもの。北海道から本州、四国など広い地域で造られている。
主な米味噌
* 北海道味噌- 北海道
* 津軽味噌 - 青森県
* 秋田味噌 - 秋田県
* 仙台味噌 - 宮城県
* 会津味噌 - 福島県
* 江戸甘味噌 - 東京都
* 信州味噌 - 長野県
* 相白味噌 - 静岡県
* 越後味噌 - 新潟県
* 佐渡味噌 - 新潟県
* 越中味噌 - 富山県
* 加賀味噌 - 石川県
* 西京味噌 - 京都府
* 桜味噌 - 大阪府
* 府中味噌 - 広島県
* 讃岐味噌 - 香川県
* 御膳味噌 - 徳島県
麦みそ
大豆と大麦又ははだか麦を発酵・熟成させたもの。九州地方で主に造られている。
主な麦味噌
* 島原味噌 - 長崎県
* 薩摩味噌 - 鹿児島県
豆みそ
大豆を発酵・熟成させたもの。東海地方で主に造られている。
主な豆味噌
*八丁味噌 - 愛知県 - 豆味噌
*名古屋味噌 - 愛知県
調合みそ
上記の各みそを混合したもの。または、その他のみそ。
*赤だし
その他(食用みそなど)
* 蘇鉄味噌 - 奄美大島・沖縄県
* 金山寺味噌 - 和歌山県
* 朴葉味噌 - 岐阜県
* 神楽南蛮味噌 - 新潟県
日本各地で味噌は作られていて風味・色は各地方でそれぞれ特徴があり、地方色の強い食材でもある。
* 参考 - 日本の味噌メーカー
ギャラリー
家庭での手作り味噌の作り方の一例を以下に示す。
*例)大豆1kg(乾燥重量)、米麹1kg、塩430g
:米麹1kg、塩430gを混ぜ合わせる。麹菌はこの時点で死滅する。麹の酵素は残り、時間をかけてタンパク質、脂質、でんぷんを分解する。塩が不足すると、雑菌が繁殖する原因となる。
:大豆1kgを一晩水に漬け、十分に柔らかくなるまで茹で、水を切り、煮豆を潰して、人肌に冷ましたものを麹と塩に加えて良く混ぜる。大豆が熱いままだと残った酵素まで壊れてしまう。
:混ぜたものをジッパー付のポリエチレン袋に詰め、空気(=酸素)を良く抜く。空気を抜かないと、特に納豆菌、カビ等の雑菌が繁殖する原因となる。樽を使ってもよいがポリエチレン袋の方が空気を抜きやすく管理がしやすい。なお、写真のように味噌製造元で味噌樽に山のように石の重石を積み上げるのは石の重さで空気(=酸素)を抜くためである。
:一夏越して味噌の出来上がり。温度が上がらないと酵素がタンパク質その他を十分にアミノ酸までに分解できないことになる。
麹酸による発がん性の有無
麹酸(コウジ酸/Kojic acid)は、平成7年の食品衛生法改正に伴う既存添加物として使用が認められている食品添加物である。この麹酸は味噌やしょう油等の製造に用いられる麹菌(Aspergillus属等)が生成する、抗菌作用を持ち原料の腐敗を防ぐ効果がある重要な物質である。ところが、その麹酸に肝臓癌などを誘発する危険性が指摘されるに至り、味噌や醤油の発がん性が問題になった。しかし、食品中のコウジ酸は熟成中に微生物、酵素等によって分解されるし(塩分が不足するとカビが生える)動物試験での濃度に比して食品中の濃度はごく微量でしかない。味噌により、肝がんを含めがんの発生が抑制されるという動物試験結果があることや古くから摂取され続けてきた食物であることから、麹酸の毒性は問題にならないとされている。
麹のアスペルギルス属としての毒性の欠落
コウジカビ(麹黴)は、アスペルギルス (Aspergillus) 属に分類されるごく普通の不完全菌の一群である。このうち一部のものが麹として味噌や醤油、日本酒を作るために用いられてきた。発酵食品の製造に利用される一方で、コウジカビの仲間にはヒトに感染して病気を起こすものや、食品に生えたときにマイコトキシン(カビ毒)を産生するものがあり、医学上も重要視されているカビである。熱帯から亜熱帯地域にかけて生息するアスペルギルス・フラバス (''Aspergillus flavus'') などのカビによりアフラトキシンが生成され、紫外線の照射により強い蛍光を発する。1960年にイギリスで七面鳥が大量死した際の分析中にアフラトキシンが発見された[七面鳥X病の発生からアフラトキシンの発見まで 山脇学園短期大学紀要 35 pp.37-61 19971221]。なお、1960年代に麹菌の''A. oryzae''や''A. sojae''でアフラトキシン生成が疑われたが、アフラトキシンを生成する機能は失われている事が判明している。
ダイズの健康への効果
ダイズ#健康への影響を参照のこと。
健康に役立つとの説
発酵によって作られる「脂肪酸エチル」が、ガンを引き起こす変異原の力を抑制するという説がある。味噌汁を飲む回数が多い人は、胃がん死亡率が低くなるという調査結果がある(1981年がん学会)。
味噌と放射能除去能力の関係を調べるために、伊藤明弘教授(1999年当時。広島大学放射線医科学研究所教授)は、マウスを使った動物実験を行った結果、味噌には、放射線から体を守る働きがあると証明した。
もっとも、味噌には塩分が含まれている為、高血圧予防の観点から塩分の過剰摂取には気をつける必要がある。
* 味噌汁 - 豚汁、冷汁
* 味噌煮込みうどん - 生麺を八丁味噌仕立てのだしでそのまま煮込んだ愛知県(名古屋地域)のうどん
* 味噌田楽 - 豆腐の切身等を竹串に刺し赤味噌等を付けて炭焼きにしたもの。
* 芋がら縄 - 戦国時代の保存食。
* 手前味噌で塩が辛い(→手前みそ)
* 味噌を付ける
* 味噌の医者殺し(良質な栄養源)
* 味噌と医者は古い方が良い
* 女房と味噌は古いほど良い
* 味噌の味噌臭きは食われず
* 味噌買う家は蔵が建たぬ
* 味噌に入れた塩はよそへは行かぬ
* 医者に金を払うよりも、みそ屋に払え
* 塩も味噌もたくさんな人
* 味噌も糞も一緒
* 味噌が腐る
* 味噌っかす - 鬼ごっこ等で一人前の能力が無い子供はこう呼ばれ、捕まえられない特権を有したりしてハンディキャップとする。「おみそ」とも。
* 味噌っ歯
* ドラマや曲の強調すべきポイント。カタカナで書かれることが多い。(「そこがミソなんだよ!」など)
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